印刷の未来を創るために。働いている社員の未来を創る方法を考えていく経営を。


株式会社吉田商会
代表取締役  吉田 智博



はじめに、吉田商会について教えてください。

弊社はグループ3社でやっています。グループの母体である株式会社吉田商会は、東京都23区にある印刷会社様向けに印刷をするための機械と資材の販売を行なっている会社です。グループ会社2つ目の株式会社グレンは、大判インクジェット印刷・制作を専門に担当しています。主に制作しているのは横断幕やポスターのような屋内外広告です。例えばデパートの壁面に設置されているような大型施設のサインに使われるものなどですね。社内にある大判インクジェットプリンターで出力してクライアント希望の仕様に従い加工し、パートナー企業と組んで施工までするという業務をしています。グループ会社3つ目の藤井商店は、シールやPOPの制作、最近ではレーザー加工も担当しています。この3社でシナジーを発揮しながら事業を展開しています。

この2社をグループとして抱えていることが当社の強みですね。印刷資材や機械を売る会社は同業にたくさんいるのですが、印刷会社様がなかなか用意しづらい設備を持っていて、他社ができないサービスを提供しています。例えば、お客様から「ポスターとか大きめの印刷できるところし知らない?」と聞かれた時に、うちでお手伝いができます、と。そこを今、全面的に会社の強みとして出しています。また、印刷会社向け以外にもう一つ営業を立ててはじめました。2社のノウハウを利用したオリジナル商品とか、あとOE向けの製品企画とか。今までにない企業にアプローチをかけていて、それが上手くいけばより一層3社がシナジー効果で成長していけると考えています。



吉田商会はどのような歴史を歩まれてきたのでしょうか?

吉田商会の歴史は、先々代である私の祖父によってはじまりました。祖父は印刷用の材料を作っていたんです。材料の元となるものを仕入れて、それを細かく粉上になるまで擦りおろして、ゴリゴリやっていくんですね。そうすると赤い粉が出来上がります。この赤い粉を「キリン(麒麟)血(ケツ)」と名付けました。何に使うものかというと、ハンコの凸版の崩れを抑制するためのもの。品質が良くて、非常に多くのお客様に買っていただけたそうです。

時代とともにハンコの在り方が変わってくる中で、「キリン血」も需要がなくなってきます。そこで吉田商会は印刷という分野に特化して、さまざまなメーカーの材料を購入し、卸として印刷会社様に売るという形態に変化していきました。

2005年、先代の社長である父が株式会社グレンを立ち上げます。前身は印刷材料を加工する工場でしたが、とあるきっかけで大判インクジェットプリンターを自社で導入、今のような社名・事業内容になったそうです。

2016年、藤井商店を設立しました。必要となる設備はニッチな機械で、当社としてはグレンと事業内容も近く、シナジーが生まれると考えまして、グループ会社として立ち上げた経緯があります。

物流まで行っているところも吉田商会の強みですね。物流を吉田商会では内製でやっているので、配送者が営業に近い位置付で印刷工場の現場のお客様に接しています。きめ細やかな資材の提供ができ、大きな設備を提案するアカウント営業と連携してお客様のビジネスをサポートさせて頂いています。うちのメンバーは真面目でいい人が多いので、取引先から好評なんです。そのため、お客様からすべて任せてもらえることが多いですね。


(左:創業者の吉田信次氏、右:2代目の吉田博公氏)

それでは、事業継承されてからのことを教えてください。

事業継承したのは2015年です。最初に手がけようと思ったのが、理念とはちょっと違うのですが、社内で共通する「信条」の作成ですね。私が1人で作りました。これを掲げようと思ったのには理由があります。

うちは以前からアカウント営業と営業兼配送の2種類の営業体制でやっていました。バブルの時はお客様のところへ当日の納品物を持っていけば、明日必要な資材の注文をもらえる。その繰り返しで会社の売上が上がる。そんな感じだったそうです。でも、印刷業界の構造が変わってきて、売る資材の量や種類は少なくなっている。設備も同じようなものは売れなくなってきている。今までのやり方ではもう仕事を取ってくることが難しい時代になってしまいました。今後はお客様のビジネスを一緒に考えていく提案型の営業をしていかなければならない。だから一旦配送は業務に移管し、既存営業はお客様への提案と目標数字の達成を重視するアカウント営業への集約を断行しました。

しかし、急に個人個人が変化できるわけはありません。そこで、「お客様が成長するためにこの機械が必要。だから提案して導入してもらいたいんだ」と「自分に課せられた数字目標を達成するんだ」ということをひとりひとりに意識してもらいたくて、まずは想うところから始めましょうということで、「強い想いは実現する」という信条を大きく掲げたのです。これは少しずつ社内に浸透してきているようです。



吉田社長の子どもの頃は、どのような感じだったのでしょうか?

そんなに活発でもなく、太っていましたね。貴乃花って言われるぐらい(笑)。ファミコンばかりしていて、あんまり外で活発に運動するタイプじゃなかったですね。小さい頃は、週1回ペースでスイミングスクールに通っていたんですけど、別に力を入れていたわけでもなく「習い事で行かなきゃ」っていう感じで通っていた子どもでした。お年玉とか小遣いを貯めて、パソコンのパーツを自分で買ってきて組み立てる、そんな子どもでした。

高校の時に水泳部に入りました。キッカケは痩せようと思ったからなんですけど、10キロ痩せました。それまでの私はナヨナヨした感じだったんですけど、心身ともに鍛えられました。水泳部というチームで大会を目指したりしていたので、そういう環境に身を置いた経験が自分の心身に大きな影響を与えたと思っています。大学では水泳サークルに入るんですけど、なぜか素質もないのに幹事長っていうみんなのまとめ役になってしまったんです。そこで人前で喋ったり、まとめたりするということに少し慣れたのかもしれません。

勉強に関しては、情報工学、プログラミングの学部に入りました。最終的に思い立って、大学2年で経営学部に転部して、文系になって卒業したんですけど。そういった流れもあって、就職活動ではIT系の営業職に就きたいなと思って受けていました。父は「お前を吉田商会に入社させるつもりはないよ」と言ってくれていたので、自分の興味がある道を進ませてもらえました。それで京セラに入社したんです。大卒で入社して7年間、29歳まで働いていました。ずっと営業職です。目標数字に厳しい環境でしたけど、相当鍛えられましたね。その後、吉田商会に入社したという流れです。



どのような流れで会社を継がれることになったのですか?

父からは一度も「戻って来い」とは言われませんでした。ただ、父も年をとり、また持病も持っていたので、会社を維持できる自分の体力に不安を感じていることもあり、私から「じゃあ手伝えることある?」と申し出ました。父も私の言葉を受け止めました。吉田商会入社後は、前職で営業をやっていたので、2年間営業をやり、その後、事業継承しました。その1年後に急に父が亡くなります。

父は、「社員を守る」という気持ちが強い人でした。だからすごく優しい。社員も含めて家族みたいな感じで会社を運営していくというスタイルは、私も守っていきたいと思っています。社員のことは、守らなきゃいけないし、幸せになってもらいたい。だから1人も辞めさせたくないという思いがありますね。



今感じている課題やそれに対して取り組んでいることはありますか?

組織課題として感じていることは、下から意見が上がってこないことですね。今の流れで会社が運営できてしまっているので、必要性を感じられていないのでしょう。なので、今私が取り組んでいることは、私自身が現場から離れることですね。何か新しいことをやる時の判断を社員に委譲して、自分たちで考えてもらうようにしています。

例えば、配送で使っているハイエースですが、今年入れ替えたんです。色は何色がいいかとか社員たちに選んでもらいました。2年前から出展している東京ビッグサイトの展示会も今年からは社員主導でやってもらいました。そういう風にして、トップダウンだけだったのをボトムアップからという取り組みにしています。

社員に任せて、その仕事は直属の上司がきちんと見ていく。そして社員に仕事を振ることでその上の上司も育つような。そういう組織のカタチを作っているつもりです。まだ不完全ですけど、「自分たちで判断しよう」というのを強制的にやっている感じですね。

グループ3社をそれぞれ任せている幹部3人と私とでは月1回ペースで会議をしています。縦割りを脱却して3社シナジーを出す為、幹部同士が話して情報共有とかコミュニケーション取る場を作りました。また、業務以外のところでは近々、バーベキューとか、社員旅行とか、そういう社内イベントをやりたいなと思っているんですけど、それを3社のみんなで企画してもらう。それで現場交流を試みたいと考えています。



今後の展望について、お聞かせください。

数字でいうと売上20億円の達成、組織規模としては過去最多の26人体制に戻したいです。あと、できるだけ事業を多角化したいという気持ちもあります。だから今の3事業ではなくて5事業ぐらいあってもいいかなと。もしかしたら吉田商会、グループじゃなくて1本になってしまうかもしれませんし。組織には私が上にいて、各事業に1人ずつ今の責任者が執行役員社長みたいな感じになってもらうイメージです。私も含めみんながいろいろ考える、それが実現するようになってくれれば、多分みんな楽しいですし、私から何か下ろす時でもみんなで考えてくれるようになっていると思います。

今、社員に不幸せな人はいないかもしれませんが、でもすごく幸せな人もいないと思っています。大企業に行けばもっとお給料もボーナスももらえるだろうし、もっと大きな案件もある。今はみんな数字も思うように伸びないし、逆に落ちているところもある。でも今やっている取り組みでみんながスキルアップして、自主的に動いて、いろいろやっていったものがうまく回って、自信に繋がって、それを経験してまた次の事をやっていく。そういう流れを年々重ねていけば、多分仕事が楽しくなる。やりがいを感じてあっという間に時間が過ぎていく。そこまで行けば、会社は自分が動かしているという自負にもつながったり、大企業にはない幸せを仕事で得られるようになっていくと思います。

私は、会社は成長する場、自己実現の場だと思っています。若手には「うちに留まらないでいいからね」って言っています。会社をうまく使って自分のステップアップを考えないとダメだよって。そのステップアップしたあなたを、吉田商会に引きとめられるように私も努力するから。社員と会社はそういう関係性であることが健全だと考えているので、「人が会社を使う」風土をつくっていきたいと思っています。



<インタビュー情報>

株式会社吉田商会
代表取締役  吉田 智博
会社ホームページ http://yoshida-s.co.jp/wp/

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