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平成30年度 事業承継税制の改正ポイント

事業承継とは、現経営者が引退などを理由に会社の経営権や株式などを後継者に引き継ぐことです。

中小企業では、経営者が株式の過半数を保有するオーナー経営者である場合がほとんどですが、引き継ぎ後の企業成長のためには株式の円滑な承継が重要となります。

なぜなら、会社の株式は業績と連動して大きくなるものであり、価値が上昇した状態でオーナー経営者から後継者にバトンが渡されると、株式に対して多額の税金が課されるからです。

今回は、平成30年1月1日から平成39年12月31日までの10年間で適用されることになった事業承継税制の改正のポイントと、その背景をお伝えします。


そもそも事業承継税制とは?

事業承継税制という表現は俗称であり、正式名称は以下の通りです。
・「非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除」
・「非上場株式等についての相続税の納税猶予及び免除」

ざっくりと制度の主旨を説明するならば、「全国の中小企業が円滑に後継者に事業を引き継げるように、相続税や贈与税を減免する」というものです。




なかなか浸透しない事業承継税制

日本の企業の99.7%は中小企業であり、日本経済は中小企業によって支えられています。

しかし、経営者の高齢化や後継者不足、仮に後継者がいたとしても多額の税金負担によって廃業を選択せざるを得ない中小企業も多いというのが実情です。

そこで、政府はこのような問題に対応すべく、平成21年度の税制改正によって事業承継税制を整えました。

しかし、利用条件は厳しく、平成27年度の税制改正でも大幅に緩和されましたが、利用者はとても少なかったのです。

平成21年の創設から平成28年3月末時点での認定件数は、贈与税626件、相続税894件にとどまっています。



平成30年度の改正点


制度の利用にあたっては、いまだに多くの条件がありますが、平成30年度から大幅に緩和されました。

主な変更点は以下の図の通りです。


項目

変更前

変更後
■後継者人数の拡大代表権を有する後継者1人への承継のみ対象。代表権を有する最大3人までが対象。
■株式の取得先対象者の拡大先代経営者からのみ対象。先代経営者以外からの承継も対象。
■納税猶予の対象株式総数の上限撤廃発行済み議決権株式総数の3分の2に達するまでの株式。取得した全ての株式
■納税猶予割合の拡大

贈与:上記株式に係る贈与税の全額。
相続:上記株式に係る相続税の8割。

贈与:上記株式に係る贈与税の全額。
相続:上記株式に係る相続税の全額

■雇用維持要件の緩和基準日における平均雇用割合が8割を下回った場合には、納税猶予は打ち切り。左記に該当する場合、一定の書類を都道府県に提出すれば納税猶予が継続される。
■経営環境に応じた減免措置株式の贈与時・相続時の相続税評価額を基に計算した納付税額。一定の要件を満たす場合、再計算を行い、当初の猶予税額を下回る場合には免除。
■相続時精算課税制度の適用対象者の拡大60歳以上の父母又は祖父母から、20歳以上の子又は孫への贈与。左記に加えて、60歳以上の贈与者から、贈与者の子や孫でない20歳以上の後継者への贈与。




いくつかの要件が緩和されていますが、特に「雇用維持要件の緩和」によって、より多くの中小企業にとって制度を活用しやすくなったと言えます。

制度が普及しなかった最大の原因は、雇用の8割を維持するという条件を満たせる企業が少なかったことです。

仮に10人の会社を想定した場合、従業員が7名になってしまうと免税猶予は打ち切られますが、中小企業において従業員が2割以上減ってしまうことは往々にしてあるものです。




事業承継がゴールではありません

平成30年度の改正措置により、今後、制度の利用が活発化することが想定されます。

事業承継税制は意図的に会社の利益や株価をコントロールするような事業承継対策とは異なるため、中小企業にとってこの制度は実に有意義です。

ただ1つ言えることは、「事業承継がゴールではない」ということです。

事業承継は「後継者に事業をバトンタッチしてはい終わり」というものではなく、後継者が新たな経営をスタートさせ、自社をより一層成長・発展させるための通過点に過ぎません。

事業承継後の目指す姿によって、やるべきことは大きく異なります

今回の記事が、皆様の事業承継税制の理解を深め、事業承継後の会社像を考えるきっかけとなりましたら幸いです。

また次回の記事でお会いしましょう!