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日本中の税理士から頼られる不動産鑑定会社を、さらなる業界の先駆者へ

株式会社東京アプレイザル
代表取締役社長 柳澤 泰章



最初に、東京アプレイザルという会社について、教えてください。

弊社は、「不動産の鑑定評価業務」と「セミナー業務」、この2本柱を中心に一部で不動産のコンサルティング業務、不動産の仲介を展開している会社です。世の中にはいろいろな不動産がありますが、不動産の適正な価格を唯一評価するものが不動産の鑑定評価です。不動産鑑定評価書というものを作っています。

不動産鑑定評価書がどのような時に使われるかというと、主に相続時です。相続税を算出するにあたり、所有している不動産の価値を提示しなければなりません。しかし、ここには問題があるのです。

評価は、路線価評価で行ないます。路線価とは、道路に価格設定があり、その道路と接している面積で土地の価値が算出されるというものです。普通の土地なら何の問題もありません。しかし、該当する土地が傾斜地や崖だった場合、本当の価値はずっと低いのですが、路面価評価では高く見積もられてしまうのです。極端な話、崖地が1憶円の評価になることも。それを適正な値段に引き戻すのが、私たちの仕事です。

現在、1000以上の税理士事務所と事業提携させていただいています。そこの税理士事務所のお客様である資産家や法人で不動産鑑定をする可能性がある場合、弊社が机上での概算評価を無料で行ない、その結果を見て鑑定をやるメリットが出たら正式にご依頼いただくという形ですね。


もう1つの事業の柱であるセミナーについて、教えてください。

もともとは、不動産鑑定評価のお客様の裾を広げるために開催していたものでした。参加いただくのは、お客様になりうる税理士・会計士の先生方ですね。

当初はセミナーを通じて不動産鑑定の実践的な使い方を知っていただくことを目的としていましたが、たくさんの好評の声をいただき、さまざまなご要望にお応えしてセミナー内容を増やしていくうちに、資産税実務や相続対策、事業承継など幅広い分野を学ぶ場として拡充し、現在に至っています。

現在は、自社でセミナー会場を持ち、年間200回以上のセミナーを開催しています。セミナー企画にあたっては、社会情勢や税制改正の動きなどに目配りをしながら、「基本の徹底」「最新情報の入手」「実務経験に基づく事例紹介」といったことを重視した講座を展開しています。不動産鑑定だけではなく、専門家の方たちに対するサポートとなるセミナーが事業の柱となっている点は、当社ならではの特徴ではないでしょうか。



会社の創業からの成長について、教えていただけますか?

東京アプレイザルは、前社長の芳賀則人がつくった会社です。最初は官公庁や金融機関から仕事をもらっていた従業員2~3名の個人事務所のような形だったと聞いています。しかし、バブルが崩壊し、「これからは会計事務所とタイアップして、そこからお客様を獲得していこう」と大きく事業転換をしました。それが平成4年くらいですね。

先見の明があったのだと思います。実際、会計事務所との業務提携を増やしていくことで、業績を伸ばし続けていくことができましたから。そのうち、会計事務所とのタイアップ数を増やしていくだけでなく、「もっと会計事務所に対して不動産鑑定評価の情報を提供できないか?」という発想になり、セミナーを開催することになりました。これが平成10年くらいです。

そこからたくさんの税理士さんとの出会いが生まれ、一緒に仕事をしていくことで、私たちは独自性の高い「強さ」を手に入れることができました。多分、税務評価では業界で一番強いと思います。税務署に出している不動産評価書は、日本で一番多いのではないでしょうか。たくさん税務署とやりあってきていますから。その実績は弊社の強みですね。だから「アプレイザルだったら任せられる」という信頼を築けていると思います。

あともう1つは、ウチは他の事務所がやらないような仕事を率先してやります。「これはできません」とお断りすることは少ないです。ここには芳賀の思いがあります。『不動産鑑定評価を通じて世の中に貢献する。それが社員の喜びである』。だから、これまでにない事例にも果敢に挑戦していくことは、私たちの使命でもあります。



柳澤さんが不動産鑑定士を志した経緯について教えてください。

大学卒業後は、NECに就職しました。11年勤めたのですが、サラリーマンを一生やるつもりはありませんでした。ただ、次に何をやるかは決めていなかったですし、見つかっていなかったので、かれこれ過ごしているうちに、「不動産鑑定士」という資格を友人から聞いたのです。どんな資格なのかと調べたら、「もしかしたら自分の一生の仕事になる資格かもしれない」と思い、勉強し始めました。

正直なところ、最初に高い志はありませんでした。先生と言われる仕事だったら一生食べていけると思いましたし、間違いないかなと(笑)。周りを見たら、弁護士はいる、公認会計士もいる、でも不動産鑑定士はいなかった。そういう意味で、需要があるんじゃないかと思ったのです。

会社に勤めながらでは勉強に集中できません。「目立つために早く受かりたい」という思いがあったので、勉強に専念するために会社を辞めました。3月に辞めて、7月が試験。その4ヵ月間は朝から晩まで勉強づくしの生活をして、その結果、一発で合格できました。試験って、1点で落ちるか合格するかの運命が分かれるものじゃないですか。そして、1秒でも長く勉強することが点数UPにつながるものですから、あの時は自分をかなり追い込んで頑張りましたね。



東京アプレイザルとは、どのような出会いがあったのですか?

試験が7月で、10月が発表だったのですが、その次にどうするかは決めていませんでした。合格発表の前にソニー生命のほうからリクルートの話があったんですね。受かるか落ちるか分からないですし、受かっても両方できるだろうと考えて、とりあえずソニー生命にお世話になることにしました。

その2ヵ月後ぐらいに、合否の発表がありました。おかげ様で合格でした。それから1年くらい後に「鑑定の仕事を活かせる場所」として知り合いから紹介いただいたのが、東京アプレイザルでした。これが平成6年の頃です。その時は従業員6名くらいでしたね。最初は、実務を通じて鑑定評価の勉強をさせていただくという形でしたが、後に正式に入社しました。

入社してからは鑑定評価1本です。私は不動産の鑑定部長を任せていただいていたのですが、会社の成長とともに、仕事の量はどんどん増えていきました。

今から2年くらい前ですかね。前社長の芳賀から「もう65歳なので1つの区切りをつけたい。社長の座を譲って会長として暴れまわりたいので、柳澤君、社長をやってくれないか?」といった打診がありました。

鑑定士事務所ですから、鑑定士から次の社長を選ぶつもりだったと思います。そして私は、有資格者であり、一番売上を上げていて、年齢も一番高く、鑑定部長もやっていた。周囲を納得させるための条件が揃っていたのかもしれませんね。

しかし、私はサラリーマンを辞めるために不動産鑑定士になった人間です。不動産鑑定のスペシャリストとして一生を全うするつもりでした。ですから、経営者になるなんて、まったく想像していなかったんです。しかし、大変お世話になった社長から「会社を任せる」と言われた時に、「これも何かのご縁。だからこそ引き受けるべきではないか」と考え直し、二つ返事で引き受けることにしたのです。



今年9月に社長に就任されてみて、どうですか?

今まで会社がずっと順調なんですよ。セミナーをやり始めてからは、業績は右肩上がり。これはこれで良いことなのですが、まだまだ改善すべき点はあると僕は思っています。それは社員にコスト意識や売上意識があまりないこと。調子が良いうちはいいのですが、悪くなったとき、売上やコストへの意識は欠かせなくなります。意識しすぎても仕方ないのですが、社員の継続的な成長という観点で、「売上を上げていかなければ会社が継続しない」という意識を個々が持つ必要性は感じています。

意識づけに紐づくことですが、収支をリアルタイムで見える仕組みも欲しいですね。今だと毎月その月でどれぐらいの収支があったかは、翌月10日にならないと誰も分かりません。例えば、早期に是正しなければならない売上推移だったとき、それが見える状態ではないため、対応が遅れてしまう状況なんです。

あと、やっぱり組織とか人が膠着化しますよね。同じことをずっとやっているわけですから。社員の成長と長期活躍を考えたとき、どのように成長意欲に応えていくか。このあたりも考えていかなくてはなりませんね。

そしてこれが一番事業に関わる問題なのですが、今年に入って法改正により広大地評価が見直されました。従来、「その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大な宅地」については、開発行為の負担を考慮し、一定要件のもとで、「広大地」として相続税評価額が減額されてきたのです。広大地に該当するかどうかですごく評価を下げられるものだったので、私たちの仕事が重宝される理由の1つでした。

しかし改正によって、広大地はなくなり、名称は「地積規模の大きな宅地」と改められ、地積や所在地域の容積率等の具体的基準により、細分化されたのです。加えて、現行の広大地評価では最大65%の評価減が可能でしたが、その割合が縮小されることに。いわゆる増税です。つまり、法改正によって私たちの仕事の一部が価値を感じられにくくなってしまいました。

ピンチではありますが、チャンスでもあります。本来の鑑定評価の戻るときかもしれません。先に説明した通り、土地は鑑定してみなければ、本来の価値が分からないものです。規定で定められた評価減割合よりも、鑑定したら評価を下げられるケースは多くあります。「鑑定で評価をもっと下げられる」というアプローチを強化していくことで、ここは誰もが気にしているところですから、これまで以上に鑑定の仕事を増やしていける可能性もあるんです。



今後について、すでに考えられていることはありますか?

就任したばかりなので、さっき話した課題意識はあるのですが、すべてまだ僕の頭の中にある状態です。今は今後取り組んでいくべきことのために、全体の仕事量などを把握しています。でも、たしかに優先順位を上げて作らなければならないものはあると感じています。それは「今後のビジョン」です。

私としては、「東京アプレイザルは鑑定業界の先駆者でありたい」と考えています。セミナーでも、専門家向けのセミナー主催者として先駆者でありたいんですね。だから、よりクオリティの高いもの、より信頼いただけるものを、企画して提供し続けなければと考えています。そのためには、時代や顧客の要望に合わせて、常に組織やサービスを変化させていく必要も出てくるでしょうね。

不動産鑑定というのは単発の仕事です。セミナーも単発じゃないですか。だから、いかようにも変えられるんですね。ただ、先代が作った思い、社員を大事にするとか、不動産鑑定評価を通じて世の中に貢献するとか、こういう根底の部分は変えちゃいけないと思っています。いわゆる経営理念ですね。それ以外は、変える必要があるのなら、どんどん変えていいと思います。

これだけ優秀な人間がいますので、新しいビジネスも始められるのではないかと考えています。そのネタ作りに今は動いていますね。まずは各自の仕事のレベルを把握して、より効率的にできるのなら、空いた時間が作れます。そしたら新しいマーケットの開拓に時間が使えるので、そこらへんを今は見ているところですね。余裕を作れる人たちを集めて何か新しいプロジェクトを立ち上げてもいいのかなと思います。会社の成長とともに、社員にも成長の機会を与えられるようにしていきたいですね。
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<インタビュー情報>

株式会社東京アプレイザル
代表取締役社長 柳澤 泰章
会社ホームページ https://t-ap.jp/

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