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技術力と営業力でものづくり企業としての未来を切り開く

株式会社SPワークス
代表取締役社長  朝倉 義博



創業からの歴史と事業内容を教えてください。

SPワークスは1960年に、私の義理の祖父にあたる鈴木九夫(かずお)が創業した精密プレス加工の会社です。もともと三菱重工の技術者だった創業者が、カメラの部品を作るところからスタートしたと聞いています。

60年代後半から70年代にかけてミシンや視力検査機器などの部品製造の取り扱いを始め、80年代に入ってからはミノルタカメラの精密部品も手がけるように。それから徐々に複写機など事務機器に業務のウェイトがシフトしてきました。

私の義父である二代目の時代には更に営業に力を入れて、IBM製のPC部品製造を行うようになり、2000年代からは自動車部品の取り扱いを始めるなど業務を拡大。二代目プリウスの部品なども当社で手がけてきました。

技術力と他の町工場にはない営業力がSPワークスの強みであり特色です。リーマンショックの影響で仕事量が激減したこともありましたが、一つの産業に固執しないスタイルでやってきたことで生き残ることができました。今後の営業戦略も様々な分野へということで考えています。



朝倉社長が経営者になりたいと考えるようになったのはいつ頃からですか?

野球少年で子どもの頃から身体を動かすことを仕事にしたいと考えていたため、新卒で日航ホテルに就職し、プールやテニスコートなどスポーツの付帯設備を管理する仕事に就きました。そこでインストラクターのようなことをしていたんです。

日航ホテルで働いた6年間の経験が、私の人生の中で大きな転機になりました。日航ホテルのスポーツクラブは会員制で、いわゆる高級スポーツクラブだったんです。会員は名だたる企業の社長や医者、弁護士といった方々ばかり。トレーナーをしながら会員の方々から人生やビジネスの考え方など多くのことを教えていただきました。

その時に、そういう人たちと比べて自分はこのままでいいのかと真剣に考えるようになったんです。経営者の方々から20代・30代のうちにやっておくべきことを教わり、漠然といつか自分も経営者になりたいと思うようになりました。


SPワークスにはどのような経緯で入社されることになったのでしょうか?

接客に関してはある程度の自信がついたところで次に自分に必要なのは営業のスキルだと考え、インターネットの学習教材の販売会社に転職しました。営業に関してはそこで一から全て鍛えられましたね。当時の上司に厳しく指導してもらったおかげで営業として芽が出て、全国でもトップクラスの成績を収めることができました。

その後は東証一部上場のクレジット会社を経て、外資系の保険会社に転職。営業マンとしてキャリアを積み重ねていきました。ただ、私の心の中ではいつか経営者になりたいという思いがくすぶっていたんです。フルコミッションで個人事業主のような働き方はしていたものの、心の何処かで満足していませんでした。

そんな時、妻の実家で後継ぎがいないことに悩んでいると相談されたんです。お義父さんから直接後を継いでほしいと言われたことはないのですが、最終的には私から手を上げて「やらせてください」と切り出しました。もともと経営者になりたいという思いが一つ。あとはお義父さんが困っているのを何とか助けたいと考えての決断でした。

お義父さんは喜んでくれましたが、反面「本当に大変だよ」と。「上場企業や外資系保険会社とは従業員も全然タイプが違う。でも、ウチで働いているのはみんな良い子たちばかりだからかわいがってあげてくれ」と、それだけは念を押されました。



入社後はどのような仕事に取り組まれてきましたか?

製造業の仕事は全くの素人だったため、まずは金型のノウハウを学ぶため金型屋さんに三年間修行に行きました。それからは修行に明け暮れる毎日。標準語のスマートな営業マンから喋り方も三河弁に変わり、手も真っ黒で、毎日同じ作業着を着て。後から「以前はあれだけオシャレだったのに、あの時代のあなたを見るのは正直辛かった」と妻に言われたこともあります(笑)。

3年間の修業を終えて戻ってきてからは現場を一年経験して、営業や経営について先代から教え込まれました。年長の技術者の方は比較的早くに迎え入れてくれたのですが、やはり難しかったのは同世代。

私と同世代で高校卒業後10年以上ここで働いている社員さんからすれば、たかだか三年修行をしたくらいの奴がポンと来て、急に上に立たれるんですから面白いはずがありません。昔から働いてくれている社員さん達に認めてもらうためには、仕事で実績を出すしかないと思いました。

まず、技術的な面では金型・プレスに関する国家資格を取得したのに加え、現場の仕事は私ではなく皆さんの方が上だということを伝えました。同じ土俵で戦うのではなく、技術的なことに関しては従業員に任せ、その分私は営業に専念。新しい取引先を増やして、目に見える形で自分の存在意義を示していくことにしたのです。


先代のお義父様からの事業承継はスムーズに進んだのでしょうか?

私が入社した直後に起きたリーマンショックの影響をずっと引きずっていたため、「もう少し経営状態が良くなってから」と承継は先延ばしになっていました。当時、なかなか事業を引き継げないことに対して、もどかしい思いはありましたね。

また、ものづくりに対する知識や実績を積み重ねてきたことで、先代と意見がぶつかったこともあります。経営に対する考え方の違いによる軋轢が生まれてしまったんです。

先代は経営者が会社のことを全て把握しておかなればならないと考える人でした。月に30社くらいのメーカーさんから300~500アイテムの注文があるのですが、先代はその全てが頭に入っていて、一つひとつ全部指示を出していたんです。

私は先代と同じ様にはできません。というよりも、これからの時代は経営者として現場の仕事に追われていてはいけないと考えていました。「経営者の仕事は何なのか」という仕事に対する考え方でぶつかっていたように思います。

先代とよく衝突していた専務時代に、以前からお世話になっていた経営コンサルタントの方からアドバイスを頂きました。「新しい機械を導入し、新しい顧客を獲得しても、全ての根幹は先代や先々代が作り上げたもの。先人たちへの感謝、絶対これを忘れてはいけない」と。当たり前のことではあるのですが、この言葉から多くのことを気付かされました。

それからは、先代に頭を垂れる気持ちは忘れずに、常に感謝の気持ちを持つようにしています。私の今年のスローガンは「60周年の決意と感謝」。今、私が好き勝手やらせてもらえているのは、先代たちが築き上げてくれた歴史があってこそ。その感謝の気持ちをスローガンに込めています。



社長に就任されてからの取り組みについて教えてください。

私が三代目として社長に就任したのは2014年。以前は10年落ちくらいの古いマシンを使っていたのですが、社長に就任してからはマシニングセンターというドリルで穴をあける機械や、ベンダーという曲げるための機械など1000万円から2000万円クラスの最先端マシンを随時導入しています。

SPワークスは技術力と営業力の賜物で今日まで継続してこられているので、研鑽を続けてきた手作業の技術を最新鋭の機械を導入しながらNC(数値制御)化して、再現性を高めていくことが課題です。一律でNC化するのは難しいため、アナログとデジタルを共存させていくのが大切だと考えています。

やっぱり働いてくれている人が幸せでなければ意味がありません。私は手作業の技術や昔からの技術者を「古い」ではなく「ビンテージ」と表現しています。ビンテージとニューマシンの共存共栄。人も物も、そういうことができると思っているんです。

また、2016年頃から中部ものづくりUNITEDというものづくりのスペシャリストを集めたプロジェクトへ参画するなど、他の企業との連携も積極的に進めています。「中部から世界、そして宇宙へ」を合言葉に宇宙ロケットを開発するプロジェクトで、SPワークスは精密プレスのスペシャリストとして部品製造に携わらせてもらっています。

ものづくり企業として、様々な話題をつくり発信していくことが大切だと思っています。情報を発信するための題材探しと営業活動には、かなりこだわってやっていますね。



今後の目標や展望をお聞かせください。

もっとメーカーさんの設計開発に食い込んで、良いものづくりを一気通貫で実践していきたいですね。とにかく、ものづくりの実際の話ができるような関係の会社を、1社でも2社でも増やしていきたいんです。現状として企画を立てるメーカーさんがものづくりの現場を理解できていないことが多く、図面に無理が生じてしまうことが製造業の一番の問題だと思っています。

SPワークスとしては、やはり金型を作るという根幹の部分は変わらずに残していかなければなりません。図面通りに正確に作り続けられる技術は絶対に変えてはいけない部分ですね。ただ、時代と共に作り方は変えていかなければいけないですし、金型の使い方というのは常に変化していくものです。

私は何でも一番大切なのはテンションだと思っていて、ものづくりに対して面白いとかワクワクした気持ちを持ち続けなければいけないと思っています。「宇宙ロケットやドローンのこういう部品をつくっているんだよ」といった何か面白い部分、みんながキラキラできる部分を持ちながら、テンションを保っていくことが重要なんです。

定量的には私が引退する時に、売上げ10億円、従業員数60人という目標を持っています。私は70歳で引退すると決めていているのですが、それまでに次世代が本当に継ぎたいと思える会社を作ることが私のビジョンです。




<インタビュー情報>

株式会社SPワークス
代表取締役社長  朝倉 義博
会社ホームページ http://sp-w.co.jp/

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