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Touch me 感じる印刷で、PLUS ONEをカタチにする

株式会社プロセスコバヤシ
代表取締役 小林 孝二



現在の事業内容と創業からの事業展開を教えてください。

プロセスコバヤシはシルクスクリーン印刷という特殊な印刷を行っている印刷会社です。世の中の印刷業は、紙媒体に印刷するオフセット印刷が約70%を占めていますが、残りの約30%が箔押しや、グラビア印刷など特殊印刷になり、その中でももっとニッチな印刷がシルクスクリーン印刷で1%以下になります。

シルクスクリーン印刷の特徴としては、水と空気以外は印刷できること。汎用性の高い印刷なんです。実は色々なところに使われており、例えば家電のマークや、電信柱に貼ってあるゴミ集積所の看板、浮き輪やビニールポーチなど紙以外の商品でよく使われる印刷になります。

私で2代目になりますが、現会長である私の父が岐阜から東京に出てきて50年以上前に創業しました。スタートは4畳半のアパートを借りて、そこに印刷できるスペースを作り、工場兼寝床という感じで始めたと聞いています。

創業当初は、ちょうど戦後の高度経済成長期だったこともあり、ビニール製品に印刷をする商品の需要が高まっていたんです。大手企業の有名キャラクター案件を印刷していればご飯が食べられたという時代でした。

1990年代から徐々に中国が台頭してきて、比較的簡単な印刷はどんどん海外に移行していきました。シルクスクリーン印刷も同じように中国に持っていかれ、海外で安いものを作って日本に入れるという流れに。

それまでは手刷り印刷でしたが、このままではいけないということで、機械化を導入しました。しかし、機械で刷る印刷も、やっぱり海外に持って行かれてしまうんです。

そこで、20年ほど前に付加価値の高い印刷に着手。最初は失敗も沢山ありました。失敗を重ね、研究を重ね、経験を積み重ねていきました。付加価値印刷の啓蒙活動を続けることで、制作者(デザイナー)に広く伝わるようになりました。



付加価値の高い印刷とは具体的にどのようなものなのでしょうか?

付加価値印刷の例としては、盛り上げの印刷など思わず触れたくなる印刷を私たちは目指しており、これを「Touch me」という言葉で表現しています。

今の時代、ネットで何でも買えますが、それでもまだまだ店頭に行って物は買われています。店頭で物を買う際、中身が一緒の商品でも商品を見た時にあれ?と思うようなパッケージであれば目につきますよね。まずはアイキャッチなんです。

その次に、手にとってもらえるかどうか。商品は触れられないかぎり絶対に買ってもらうことはできません。触れられれば購買していただける確率がちょっと上がります。印刷を通してそこのお手伝いをさせていただいているんです。

いくら良い物でも目に留まらなければ売れないし、触ってもらわなければ買ってもらえないというところで、消費者の目に留まり手にとっていただけるような付加価値のある印刷を行っております。

でも、面白いもので、まだ手刷も残しているんですよ。出来る会社が少なくなってきて、手刷の仕事が戻ってきているんです。手刷りでの印刷が創業のスタートだったという部分もあるので、その部分はできる限り大切にしていきたいな、という思いはあります。

今は付加価値を高める印刷に力を入れています。ある意味で、手刷というのも付加価値になりつつあると思っています。



小林社長は子どもの頃から家業を継ぐことを意識されていましたか?

私は次男なので、正直長男が会社を継ぐのかなと心のどこかで思っていました。子どもの頃はあまり意識していなかったと思います。

幼少期を思い出すと、とにかく両親は忙しかったなという思い出がありますね。寝ている時に印刷をしている音が常に聞こえていたというイメージがあり、今もその音は耳に残っています。

2階建ての家で、1階が工場、2階も一部工場で、2階に住んでいたのですが、その頃、家族と住み込みの従業員さんが沢山一緒に住んでいました。一番多いときで13~14名いたと思います。今のうちの工場長は、私がまだ小学生の頃に入社され、住む込みで勤めていました。よく遊んでいただきました(笑)。ご飯を食べるのもお風呂に入るのも競争です。でも楽しかったですね。

それが今、会社の基盤となっています。先代が育てた人材、社歴の長い社員が非常に多いんです。学校を卒業してから30~40年働いてくださっている方もおり、本当に皆さん長く勤めていただいています。それも、社風の1点になります。



小林社長がプロセスコバヤシに入社するまでの経緯を教えてください。

私が大学に入学した時はまだバブルだったんですね。大学3年生の時にバブルが弾け、あれ?というくらい先輩たちが就職にものすごく苦労し始めました。その一つ前の世代は簡単に色んなところに就職できていたのに、たった1年の違いだけで就職先はガラッと変わりましたね。

私が就職活動を始めた時はバブルが弾けて2年目でした。メーカーをはじめ本当に色んなところを受けたのですが、結局受かったのが印刷会社だったんです。家業で印刷をやっていたので、少なからずそういうところを受けたというのは意識としてあったのかもしれません。

採用していただけた印刷会社に入社して7・8年ほど勤めさせてもらったのですが、30歳を手前にして家業を意識するようになりました。そこで、30歳になるタイミングでプロセスコバヤシへの転職を決心しました。




入社後、社長に就任するまではどのようなお仕事をされてきましたか?

入社してプロセスコバヤシに営業がなかったことに危機感を覚えました。先代社長の父が営業を兼ねていたのですが、印刷の現場を回さなければいけなかったので、営業に専念できていなかったんです。

本当は印刷の現場や経理など色々経験したかったのですが、とにかく外に行って仕事を取りに行かなければならないという思いがあったので、すぐに営業をやりました。

最初は営業職の一般社員として働き、入社10年目から専務として働くようになり、会社を引き継ぐことを意識するようになりました。

やはり接する人達もそういう人達が増えてきて、父も75歳を超えており元気なうちに引き継ぎたいという意向だったので、それは非常に助かったと思っています。

何かあってからの引き継ぎというのは厳しいので、事業継承するには1年以上かけて引き継がせてもらい、2015年、私が44歳の時に二代目社長として就任することになりました。



事業承継後、変えられたことはありますか?

社長に就任して思ったことは、やはり家族を守らなければならないということ。

自分の家族はもちろんのこと、プロセスコバヤシで働いてくれている社員と、社員の方々の家族がいるんだということは強く意識するようになりました。先代の父も社員を家族同然に思っていましたし、私も先代のこの想いを強く意識して引き継ぎました。

事業承継にあたって、先代が元気なうちに時間をかけてじっくり引き継ぐことができたのは大きかったですね。父からは経営者として大事にしなければならないことを教えられました。特に「社員を大切にしろ」と何度も言われました。

父は「ありがとうという感謝の心」、「真心のこもった誠実な心」、「私がやりますという謙虚な心」という三つの心を大切にしており、私の心得となっています。特別なことは一つもありません。どれも当たり前のことなのですが、この当たり前を完璧にこなすのはなかなか大変なんです。

私自身もこの心得を完璧に実践できているかと言われればまだまだです。簡単なようで難しい一生のテーマだと思っています。



引き継いでから直面された課題があれば教えてください。

社長に就任する以前、専務時代から、時間をかけて働き方に関することは少しずつ変えていきました。以前は、やはり残業が多く、遅くまで働いているのが当たり前のような状況だったんです。また、第一土曜日以外の土曜日は休みではなかったので、時代に合わせてその辺りは変えていきましたね。

最初は、「そんなんじゃ仕事にならない!」といったようなことも言われましたが(笑)、それを理解してもらうのにすごく時間をかけたと思います。今でこそ当たり前のようになっていますが、変化することに最初はすごく抵抗はあったんです。一気に変えると歪みが生まれてお客様にご迷惑をかけてしまうので、徐々に徐々に時間をかけて改善していきました。

ここ数年、現在進行形で課題と感じているのは人材育成です。現場では先代の頃から働いてくださっている60代・70代の方も多く高齢化が進んでいるので、今後のことを考えると現場の引き継ぎをしていかなければなりません。また、営業側のスタッフも新しく採用していきたいと考えているのですが、簡単ではありませんね。

未経験の方も積極的に採用しています。昨年も現場で新しい方に2人入ってもらいました。1~2年ではなかなか難しい部分はありますが、今一生懸命頑張ってくれていますし、何より新しい風が入ることが非常に良い効果を生んでいると思っています。

組織や風土を変化させていくにあたって先代の父とぶつかることも多く、新人の社員から「社長と専務は仲が悪いのでしょうか…?」と聞かれたときは、ちょっとドキッとしましたが(笑)、仲が悪いわけではなく、お互いに真剣だからこそ意見がぶつかることがあるのは当たり前なんですよね。

私が社長になりガラッと何かを変えるようなことはしていませんが、少しずつ変化させていっています。いくら良いと思うことでも一気にやるのではなく、少しずつ変えていくのがウチの会社には合っているように思います。




今後の展望についてお聞かせください。

印刷業は少しずつ減少していったとしても、完全になくなることはないと思っているので、付加価値の高い印刷という現在の方向性は今後も続けていきたいと考えています。ニッチな世界をもっと追求して、隙間を狙っていくつもりです。100人以上の会社にしようと思ったら印刷業だけでは厳しいかもしれませんが、現在の20~30名くらいの規模であれば十分勝負ができる手応えは感じています。

ただ、今は付加価値として提供できていることでも、時代とともに付加価値ではなくなることもあり得るため、その点については危機感を持っています。自分たちが付加価値だと主張しても、時代や社会が求めていなければ、それはただのこちら側のエゴになってしまいますからね。

付加価値印刷以外でも、ライバルが少なく他社に真似できないような新しい事業をもう一つの柱にしようと取り組みを始めています。現在は少しずつ実がなりつつあるような状況です。付加価値印刷という一つの柱だけでなく、もう一つ事業の柱を確立させて、そこにいろんな実がなっていくといいなと思っています。




<インタビュー情報>
株式会社プロセスコバヤシ
代表取締役 小林 孝二
ホームページ http://www.pro-koba.co.jp/index.html

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