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車が生活に欠かせない八王子で、地域と新しい関わりを持つガソリンスタンドを創造する


有限会社村田石油
取締役 村田 晃一



村田石油がどのような会社なのか、教えてください。

村田石油は、地元八王子市でガソリンスタンドを運営している会社です。創業は1971年。今はガソリンスタンドをベースとして、車の販売、買い取り、車検、リース、自動車保険などを扱っています。新規事業として手がけ始めているのが、クルマに車イスを載せる装置の取り付け、福祉車両の整備、福祉車両のレンタカーなどです。

創業したのは祖父です。祖父は畑と土木をやっていたのですが、未来のことを考えてガソリンスタンドを作ったそうです。みんながクルマに乗るようになっていく時代を見越してのことだと聞いています。業界のピークは1990年代の後半で、セルフガソリンスタンドの解禁に伴って、ガソリンスタンドはだんだん大型店に集約されていきました。全盛期には全国で6万軒あったガソリンスタンドは、今では3万軒くらいに減少。毎年1000軒ずつくらい減っています。

このような状況ですので、ガソリンだけでは収益が見込めません。そこで各社、販売や整備に力を入れていったという背景があります。当社の場合は、福祉車両に目を付けました。調べてみると、ディーラーに依頼すると3~7日かかる修理が、技術的には1日でできるとのこと。「じゃあ、やろう!」と始めたことが、当社の独自性になったという感じです。ガソリンって、前年対比98%ずつぐらい需要が減っているんですよ。でも、ウチはずっと売上を伸ばしています。この成果は人材育成によるものですね。



こだわりの人材育成とそこにかける思いについて教えてください。

キッカケは、若手社員が辞める時に言われた言葉ですね。「この会社のことは好きですけど、自分の将来と子供のことを考えて辞めます」って。その時に、「そっか…」と思いました。実は、自分だって将来どうなるか不安だったんですよ。親に言われてガソリンスタンドに来たものの、これで将来大丈夫なのかと。でも、その不安を隠して、誰かのせいにしていたところがあって。辞める社員の言葉を聞いて、「僕自身がこの問題と真剣に向き合わないといけない」と目が覚めたんです。

次に、どうすれば社員たちに「この会社でずっと働いていけば大丈夫だ」と思ってもらえるかを考えたとき、手に職をつけられること、何をやれば評価されるかが分かりやすいこと、会社の業績を上げていく仕組みがあること…といった、取り組まなければならないことが見えてきました。

ちょうどその頃、従妹の旦那さんからある研修会社を紹介されたので、まずは自分が受けて、社員に展開していこうと決めました。例えば、当社では自動車整備士の資格を取らないと正社員になれないというルールがあります。社内に、勉強する・学んでいくという風土を作ろうと思ったんです。今は、社内の各担当が社員向けにさまざまな勉強会を開催するまでになりました。内容は、整備とか、セールスとか、洗車のコーティングのこととか。仕事ですぐに活かせる知識・スキル習得が目的ですね。

そして、「自分たちが誰のために、何のために、なぜ仕事をしているのか」ということを明確にしました。そして、全社員の立候補制で、自分がいいと思った自分の仕事を社内SNSにアップしてもらい、その中から優れたものを表彰する仕組みも作りました。売上や販売数ではなく、お客さんが一番喜んでくれたと感じられる仕事を、みんなで賞賛しています。



村田さんの生い立ちから村田石油入社までを教えてください。

僕は、よく太っていて、コロコロしている子どもでしたね。お坊ちゃんだったと思います(笑)。小さい頃から「将来は社長になるんだろ?」って親に聞かれて「うん」って答えると褒められた。だから、そうなるものだという意識はずっとあったと思います。

でも、父親との関係は思春期の頃から険悪になっていきました。大学生の頃、ストリートダンスにハマって、僕は結構本気でやっていたんですよ。でも父親からは「またお前はチャラチャラ遊んで」と言われていました。カチンときましたね。一応将来のことも考えていることを知らしめてやろうと、飲食店にスポンサーになってもらったり、沖縄から有名なダンサーを呼んだりして、僕が中心となって結構大きなダンスイベントを開催したりしていました。

ダンスは僕を変えてくれたものだったんです。内気だった僕を、自分の殻から一歩踏み出す勇気をくれたのがダンスでした。だから渋谷のクラブで400人くらいを集めたイベントを成功させた経験は、自分の中では大きな自信になったと思います。

大学も後半に差しかかって、真面目に就職活動をしていると父親が言うわけです。「なんでウチの仕事の手伝いをしないんだ」って。父親としては「会社を継ぐんだから、家業に近い仕事をしろ」ということだったと思います。癪ではあったんですけど、たしかに一理あると思って、埼玉県にある出光興産の子会社に就職しました。好きなダンスができなくなったので、目の前の仕事に集中しようと思って、成績はいつもトップでした。

ガソリンスタンドでの仕事はすべてそこで学びましたね。会社をやる時にやるべきこと、働いている人の気持ちというのは一番勉強させてもらったかなと思います。そして仕事を知るうちに、父の苦労も分かってきて。自分の中にあったわだかまりは少しずつ解消されていった気がします。その会社には結局4年半くらいいて、新しいお店の立ち上げを手伝うために、村田石油に戻ることになりました。



村田石油に入社されてから現在までの仕事について聞かせてください。

最初は課長代理で、新しく始まったお店の立ち上げを担当しました。立ち上がったら、創業店を全面改装しようという話になって。セルフ対応のガソリンスタンドにするための仕組みづくりなんかを手がけて、今はそういった仕事を担当しています。

人事とか、経営とか、財務とか、いろいろなところを徐々に任せてもらっていますが、まだ事業継承はしていません。父曰く、正式な社長交代は僕の結婚式の父親のスピーチの時に行なうそうです。「今日をもって社長を譲る」というサプライズ承継らしいのですが、事前に僕が聞いている時点でサプライズじゃないんですけどね(笑)。

祖父は村田石油をはじめました。父はその村田石油を守ってきました。じゃあ、僕は何をすべきなのか。いろいろ考えた結論としては、「仕組みを作って、仕組みを改善していくこと」と「社内にあたたかな人間関係を作っていくこと」だと思いました。

仕組みを作るのは、人は変えられないからです。でも、人は変わることができます。会社にとって都合がいい人間を作るのではなく、その人にとって良い結果や未来につながる仕組みを作っていくことが、僕の使命じゃないかなと思っています。ただ、社員にとって後出しじゃんけんや寝耳に水のような仕組みではいけないと思うので、きちんと仕組みを作る理由をオープンにして、場合によっては面談の機会を作って、きちんと話し合って納得してもらって進めています。



今、注力されていることは何ですか?

幹部の育成ですね。具体的には、それぞれのテーマに合わせたプロジェクトのリーダーを幹部のみんなに任せています。プロジェクトは、役職や店舗に関係なく横断しており、会社の職位としての縦ラインと、プロジェクトの横ラインの2つがあり、網の目になっているイメージです。主体性を発揮してもらいたいというのと、組織の中での立ち位置を意識してもらいたいと思って始めました。ある役職に就いて上がいたとしても、頭打ちではなく、活躍できる場所はある、成長できる場所はあると感じてほしいんですよね。

あと、コミュニケーションを大切にしています。具体的にやっているのは、事実をもとにした面談ですね。1週間ごとに目標を立てて、スケジュールを書いて、課長が出した行動指針に対して、各項目で自分が行なってきたことを書き、10点満点中何点か自己評価も書きます。加えて、その週に自分が感じたこと、良かった点と改善点を書きます。それらをもとに話し合う時間を作り、相手のことを理解するとともに、考えかたにブレがないかお互いに確認していく。そういう手間と時間を大切にしています。

成長って、その人の今までの考え方が変わって、前向きにその人がそうなりたいと思って、そうなっていくことが大事じゃないですか。それを実現するための土壌を作っていきたいと思っているんです。



今後の展望について教えてください。

介護タクシーを始めようと思っています。介護タクシーは『ユニバーサルタクシー・スマイルファンファーレ』という名前になりまして、2019年の2月から始める予定です。介護タクシーって午前中に仕事が終わる場合が多いので、専業でやろうとすると厳しいですが、ウチでやれば午後はスタンドのほうで働けます。このような取り組みをしているガソリンスタンドは他にはまだないと聞いています。八王子という立地的に、圏央道に乗れば湘南など神奈川方面へ出やすいですし、中央道に乗れば山中湖や河口湖へ行きやすいですし、色々な人に車に乗って出かける楽しさを感じていただきたいと思っています。足が不自由な方のお墓参りや旅行に行きたいというニーズはありますからね。レンタルかシェアリングサービスかはまだ検討中ですが、キャンピングカーも取り扱おうと考えています。

あとは、介護施設の運営ですね。ガソリンスタンド併設なのか、単体なのか、色々な手法はあると思うのですが、看護付きの小規模多機能+リハビリサービスができる、お年寄りのジムみたいな感じものを構想しています。そして、介護している人のケア。心の悩み、不調のときに相談に行けるところって、なかなかないんですよね。精神科に行くとすぐに薬が出されてしまうので、もっと手前のケアができるものを作って、介護に関わる人のサポートをしたいなと思っています。

社内のことに関していうなら、やはり人材育成ですね。僕は社員の資格取得をバックアップしています。僕も毎年資格を取りますけど、社員も頑張ってくれているんですよ。販売士とか、FP3級とか。ガソリンスタンドの店員には関係ない資格に思われないかもしれませんが、保険とかリースを扱うので、お客様にちゃんと提案するには専門知識があったほうがいいと思うんですよ。また、資格を取ったり、その知識が役立つことで、社員の新しい可能性が広がっていけばいいなって思います。「この会社で働いていけば大丈夫だ」と社員みんなから思われる会社にしていきたいですね。
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<インタビュー情報>

有限会社村田石油
取締役 村田 晃一
会社ホームページ https://muratasekiyu.jp/

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