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時代とともに変化していく広告媒体に、『創合力』で対応できる企業へ

株式会社レバーン
代表取締役 匹田絵人



創業から現在に至るまでの変遷について教えてください。

松下電工のデザイン部門で働いていた私の父親が、そこで培ったデザインのノウハウを活かして1970年に起業したのがレバーンの始まりです。起業するにあたって専門学校に通っているうちに仲間が集まり、かつて原宿にあった同潤会アパート(現在の表参道ヒルズ)の一室で設立したのが、現在の会社の前身となるアートスタッフレバーンというフリーのデザイナー集団でした。
創業当時はまだPCが普及していなかったので、手描きの絵やイラストを中心とした広告の仕事を主に扱っていました。父はイラストを描くのが得意ではなかったためデザインを担当して、イラストレーターの仲間と役割を分担して展開していったようです。次第に頂けるお仕事が増えてきた1980年に有限会社化し、その五年後1985年にその後株式会社に移行しています。
イラストレーターが複数いるデザイン会社というのは当時から珍しい存在で、その特徴的な部分は現在まで引き継いできています。PCが一般的になってきたことに伴いCGを取り入れたり、インターネットの普及にあわせてWebデザインに進出したりと、時代の変化にあわせて新しい技術を取り入れて発展してきたことで、45年以上継続してこれたと思っています。

レバーンの強みはどういったところにありますか?

イラストやCG、Webデザイン、コピーライティングなどクリエイティブワーク全般を取り扱っており、様々なジャンルのクリエイターを擁して幅広い表現力でお客様のご要望にお応えできるところが最大の強みだと思っています。我々はこれを「創合力」という言葉で表現しています。デザイン、イラスト、CG、Webなど一つひとつ専門的にやっている制作会社はたくさんありますが、全てを自社だけで揃えている会社はそうはありません。また、ただイラストが描けるだけでなく、図面を読んでイメージを思い浮かべ、構造図のイラストを描き起こすことができる専門的な技術を持ったイラストレーターがいることも強みですね。美術大学を卒業したレベルの高い人材を中心に採用していますし、採用してから1年間は図面を読んでイラストを描き起こす訓練を徹底させるようにしており、クリエイター育成には相当力を入れているんです。
レバーンの強みは、先代の社長や部長が45年という長い歴史の中で徐々に積み上げてきたくれたものす。二代目として引き継いだ私としては、先代をはじめ独自の強みを築き上げてくれたスタッフの方々には感謝の念に尽きません。


匹田社長がレバーンに入社された経緯を教えてください。

父親とは全然違う道で生きていきたいと思っていたため、実は会社を継ぐ気は全くありませんでした。小さい頃から柔道や合気道など武道をやっており、将来はアクションスターやスポーツトレーナー、体育の先生などになりたいと思っていたのですが、高校生の時にエレキギターと出会いバンドをやり始めたことで音楽の道に進むことを決めました。1999年には某プロダクションからミュージシャンとしてデビューし、マキシシングルCDをリリースし、TV出演や日本各地でツアーをまわっていた時期もありました。そのバンドは2年間で解散し、別のバンドを組み立てている期間を利用して専門学校の夜間コースに約一年間通ってWebデザインを学びます。まだバンドは続けていたのですが専門学校卒業の頃、タイミングよくITベンチャー企業にWebディレクターとしてのお声がかかりましたので、一度就職するのも経験だと思い、ポータルサイトの立ち上げやeラーニングの開発などに携わりました。就職して1年半が経った頃、父が急な心筋梗塞で倒れ、会社復帰が見込めないと医者から告げられた事をきっかけに、自分が会社の責任をとる必要があると判断し、IT企業を退社。同時にミュージシャンとしての道を諦め、2008年にレバーンに入社することとなりました。
紙媒体のグラフィックデザインに関しては全く経験がなかったため、業界を勉強するために飛び込みの営業からスタートして、ノウハウなど様々なことを自力で覚えながら営業兼ディレクターとしてやってきました。

経営者の親族として入社したことで苦労されたことはありますか?

社長の息子として入社したことで周りからの風当たりは強かったですね。入ってから当分は「こんちくしょう」という気持ちでやっていました(笑)。2013年に副社長に就任してから会社の運営側に回り、2016年には代表を交代として二代目として引き継いだのですが、結局社長になってからも社長じゃない部分があるのは仕方がないと自分に言い聞かせてきました。レバーンに入社して右も左も分からない頃に育ててくれた先輩もいるので、後輩として先輩方への敬意は忘れないようにしています。ただ、経営者である以上それだけではダメなんですよね。トップとして悪いことは悪いと言わなければならないですし、やはりちゃんと指示をしなければなりませんから。そういったところでの葛藤は相当ありましたし、いまだにあります。

二代目として継ぐ覚悟が固まったのはなぜですか?

二代目経営者はダメだと思われがちなのも分かっていましたし、クリエイティブ制作の会社に絵も描けない人間が入ってきて何が分かるんだという目で見られることは覚悟していました。それでも、入社を決めたときから息子である自分が会社を引き継がなければならないという覚悟は決まっていましたね。
父は会社に行くことが好きで、一緒に働く仲間が好きで、いつも楽しそうに働いていました。経営者と言うよりはクリエイターで、社員からは兄貴的な存在として慕われていたと思います。そんな父が築き上げてきた会社を潰すのは嫌だと自然に思ったんです。レバーンは父の感性に合った仲間でつくりあげてきた会社なので、同じ感性を持った人間でないと引き継ぐことができないだろうと考えていました。それと、お金儲けが第一義でなく、仕事に対するプライドと仲間に対しての思いやりを大切にできる人間でなければという思いもありました。また、初代が作り上げた良い部分だけではなく、会社としての未熟な部分の責任を負うことができるのは他人では不可能だと思っていたので、息子である自分が継がなくてはいけないと考えるようになったんです。


会社を継がれてから課題だと感じられているところはありますか?

レバーンは、人間関係を一番大事にすることを徹底しているため、社員同士が非常に仲の良い会社です。釣り部やスケッチ部、カラオケ部など部活動が盛んで、社員同士が仕事以外でコミュニケーションをとることを大切にしているんです。私も釣り部に所属していて、今でも社員たちとよく釣りに出掛けています。
ただ一方で、ずっと横並びでやってきた会社なので、組織としての強さがないことは課題だと感じています。組織としての在り方が固まっていないため、父の時代から長年やってきた仲間はいいんですが、新しく入ってくる若い社員たちと温度差があり、一時期は離職率が非常に高くなってしまったこともありました。そのため、福利厚生や人材を育てる仕組みなど組織面は強化していかなければなりません。人材を採用する際は、仲間に対するコミュニケーション能力や思いやりなど人間力の部分を重視しています。技術力が高くても社風に合わない方を採用してしまうと後々上手くいかなくなることが多いので、今は一次面接を私が担当をしていて、最初の段階でレバーンに合った人材かどうかを見極めるようにしています。
次世代のリーダー育成も大きなテーマの一つです。ずっと創り手としてやっていきたいと思っているクリエイターが多くなってきているので、個々人の特性や考え方に合わせた人材育成をしなければと思っています。今はヤル気のある社員を勉強会や異業種交流会に積極的に連れて行ったりして意識を上げている最中です。財務面では、まだまだ手書きでアナログな資金繰りをしていることが課題です。成果物を納品してその対価を入金してもらい、入金されたお金で外注費を払うというサイクルで回しているため計画性に乏しく、資金繰りの点で見通しの悪い部分があるんです。今はその部分の改革に着手し始めたところです。また、アナログな部分が多いと業務効率が悪くなるため、費用の精算などをソフトウェアで一元管理する仕組みを導入して業務改善を進めています。

時代の変化にあわせて新しく取り組んでいることはありますか?

企業の広告費は景気の良し悪しに大きく左右されます。特にリーマンショックによる影響は非常に大きく、2008年以降は企業が広告にかける費用が格段に落ち込んでいきました。レバーンでもご多分に漏れず売上げが下がってきたため、このまま同じことを続けているだけではいけないという危機感を持つようになったんです。広告制作事業に代わる新規事業を色々と模索する中で辿り着いたのがキャラクターライセンス事業でした。社内にはコンペ等でボツになったキャラクターたちが沢山溢れていたので、最初は、埋もれていたキャラクターたちをもう少しブラッシュアップして何とか活用できないかというエコな気持ちで始めました(笑)。ただ、せっかくやるならみんなを巻き込みたいと思い、社員からアイデアを募集したところ、意外と興味を示してくれて色々とアイデアを出してくれる社員が結構いたんです。特に昔からいるコピーライターの部長がすごく良いキャラクターを作ってきてくれました。今うちで取り組んでいる「さかなの事情」という正面のさかなキャラは彼が生み出したキャラクターです。

キャラクターライセンス事業をどのように展開されていったのでしょうか。

初めはどのようにビジネスを展開していけばよいか分からなかったので、キャラクタービジネスを手がけていた知人に教えを請いながら、東京ビッグサイトのキャラクターライセンスショーに出展するまで漕ぎつけました。当初は社内でも賛否両論だったのですが、東京ビッグサイトで大々的に張り出されている自社キャラクターや、当時副社長だった私が自ら一人で営業をしている姿を社員たちが見たことで、本気度が伝わって意識が相当変わってきたのを実感しています。取り組みはじめた2013年頃から形になるまで5年はかかりましたね。ただ、まだ売上げ的には全体の1割にも満たないくらいのレベルです。キャラクタービジネスは、認知度が上がってから収益に反映するまでにタイムラグがあるため、これからだと思っています。
現在、UFOキャッチャーでビッグクッションとしてリリースしており、自分が音楽でデビューした時と同じような感覚なんです(笑)。


今後の展望について教えてください。

昔からプライドを持っている圧倒的なクオリティの高さは今後も維持しながら、時代とともに変化していく広告媒体に対応していけるようオールマイティな技術力をつけていくことは常に意識していくつもりです。
定量的には3年以内に売上げ規模を20~30%アップさせる目標を掲げています。そして、5年後にはキャラクターライセンス事業を軸としたストックビジネスで収益の三分の一を上げられる形に持っていきたいですね。簡単なことではありませんが、今ようやくスタートラインに立つところまでは来れたと思っています。
社員数を増やして会社を大きくしていこうとは考えていませんが、動画のクリエイターなど技術者を集めていく中で必然的に人数は増えてくると思います。それに伴って自然と売上げもあがってくるような状況をつくっていきたいですね。正社員だけではなく派遣や業務委託、アルバイトなど様々な雇用形態を試みているところです。また、地方からの人材や外国の方を採用する取り組みも進めています。先代の父は、正社員に強くこだわっていて、特に外国人を採用することには批判的でしたが、時代が変わってきているので考え方も柔軟に変化させていかなければならないと思っています。
日本だけじゃなくアジアを中心に世界を視野に入れたグローバル展開をしていかなければならないと考えているため、外国の方も積極的に採用していきたいですね。また、これまでは広告代理店を通した仕事が多かったのですが、お客様との直接的な仕事を増やしていくため、数年前から個人的な営業活動をじわじわとやってきました。広告代理店の指示で仕事をするのではなく、自分たちが代理店のように提案できるレベルにまでなっていかなければダメだと考えているためです。
同潤会アパートから始まった45年以上歴史のあるデザイン会社としての価値を活かしながら、常に時代に合わせた新しい感覚でデザイン制作を行っていくことで、社員たちが誇らしく思えるようなブランド力を発揮していきたいと思っています。

 

<インタビュー情報>
株式会社レバーン
代表取締役 匹田絵人
会社ホームページ http://www.lesbanc.co.jp/

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