柔軟性を持って仕事に取組み、お客様を掘り下げてシェアナンバーワンへ

八大株式会社
代表取締役  岩田 享也



創業から現在に至るまでの変遷について教えてください。

今年で創業76年目になりますが、創業時は初代の祖父が日本橋人形町周りの人達を集めて創業していました。当初は紙の輸送を手掛けており、会社の名前は、箱崎に八大龍王という龍神様がいるのですが、そこから由来しています。

ネット社会の今と違い、広告は紙が主流でしたから、人形町の界隈には多くの広告代理店や出版・印刷関連の会社や工場が存在していました。当社は大手製紙メーカーの倉庫から断裁屋・印刷工場・製本屋・穿孔屋などへ運ぶ中間輸送に従事。戦後復興で多くの紙が必要になっており、単価は低いですがボリュームがあったのです。

父が二代目となってからも紙を専門として運送業を営むことを引き継いでいました。バブル時に他の事業へと見向きもせず、一貫して紙を主体とした事業を展開してきたのです。

私が三代目を継承しようとなったときは、ちょうどIT化の波が押し寄せようとしていたときでした。このまま紙を主体とした運送業を続けていては従業員の給料が払えなくなるという危機感を覚え、事業転換に着手。紙業界から花き業界への転換を経て、配送センターからお客様の店舗まで商品を配送する食品輸送と、大手物流会社のセンター間輸送・また集配作業の委託業務である基幹物流へとシフトしてきたのです。

食品輸送では市場・スーパー・外食といった3本、基幹物流では西濃運輸さんと佐川急便さんの2本、そして3PL事業と、全部で6本が現在主流となりました。今では車の台数が42台、規模は5億円、従業員は50名で頑張っています。



御社の特徴や強みを教えてください。

運送業というとトラックの運転だけでなく多くの荷物の積み下ろしがあるので、男性の力仕事というイメージがあると思います。ただし当社では、車体後方に上下するテーブルが付いていて荷下ろしが簡易にできるゲート車や手で持てる軽量物に特化しました。

また、仕事の平準化にも取り組んでおり、繁忙期をなくし365日ほぼ同一時間帯にして乗務員の体への負担を抑えています。食品を扱っているので、比較的衛生面でも清潔ですから、人が嫌がる仕事ではありません。

少子高齢化で労働人口が減っていきますから、幅広い世代、とりわけ若い女性からシルバー世代の男女に至るまで仕事がしやすいようにしているのです。やりたいと思ってもらえ人材が集まりやすい仕事に軸を置いています。そもそも人材が集まらないことには何もできませんからね。

雇用契約の方も、全員正社員として採用しています。他の運送会社では業務委託や派遣ドライバーを採用していますが、当社では全員を正社員にすることで、働きやすい環境を整えました。他の会社で65歳になって定年退職した人でも、まだまだ働きたいという人は再雇用しています。


岩田社長が八大に入社された経緯を教えてください。

私は長男だったため、幼少期からいずれ会社を継ぐという意識は漠然と持っていました。将来的に経営者になるわけですから、学生の頃から学級委員や部活の主将を担ったりと必然的にリーダーシップを取ろうと心がけていましたね。

大学時代は講義や部活の合間にスポット業務でトラックの配送を手伝っていました。トラック配送の現場を体験できますし、それに親の手伝いにもなりますからね。

大学卒業後は、営業の仕事を覚えるために他の不動産会社に一旦就職したのですが、親から早く会社に戻ってきてほしいと要望がありましたので、1年で戻りました。人手不足だったので、身内の私が帰ってくることで人件費を浮かす意味合いもあったと思います。八大に戻ってからは、最初は現場のドライバー業務を担当しました。

ドライバーの業務をこなしながら、次期後継者として紙専門の運送業を続けていくことに危機感を頂くようになりました。IT化の波が押し寄せてきており、データ化がどんどん進んでいくことで、紙専門の運送業として続けていくのは非常にまずい事態だと思ったのです。



状況を打開するために取り組んだことはありますか。

事業継承を視野にいれた2010年頃、本格的に業界転換に舵を切りました。心がけたのは周りと徹底的に話し合うこと。先代の父がバブル期でも大金を投資せず、健全な経営をしてくれていたことにはすごく感謝しています。ただ、今後を考えていくと、データ化が進む中でダンピングが始まり、海外の安い輸入紙が入ってくるわけです。紙から転換していかなければ会社を継続していくことは難しくなるという話をしました。

とはいえ、両親にとって今まで自分たちが築き上げてきたものを「はいそうですか」と変えるのは簡単なことではなかったのでしょう。かなり衝突しました。両親は過去の経験を元に物事を考えていましたが、私は10年・20年後を見据えたビジョンを持っていたため、時間軸が合わず話が噛みあわなかったのには苦労しました。もうこれは自分の意見を言い続けて納得してもらうしかないと思いましたね。

そんなときに銀行さんの紹介で花き業界のお話をいただきました。花き業界は物流の仕組みが遅れていましたので、これはシェアを取っていけるという実感があったのです。成長できる可能性はありましたが、車自体を切り替えないといけないことが分かったので、協力会社の皆さんと共にスタートしました。

「今まで問題なく仕事していたのに、どうして変える必要があるのか」と従業員からの反発があったこともあります。三代目が暴走していると批判されることもありましたが、こちら側としても会社を潰すわけにはいきませんので、従業員一人ひとりと話をしていきました。

結果的には方針転換に合わない数名の従業員は離れていきましたが、会社の現状と将来を考えてくれた従業員たちには理解してもらえたことで、業界を転換していくことができたと思っています。



花き業界からさらに業界を転換されたのはなぜでしょうか。

紙や花き業界は繁忙期があり、紙だと教科書の年度切り替えやカレンダー、花きだと母の日やクリスマスのように一年の間に稼ぎ時が存在します。各シーズンの業務量に波があり過ぎるのです。それでは従業員が疲弊してしまうため、仕事を平準化する必要がありました。そこで目をつけたのが365日配送があり平準化に適している食品業界だったのです。

花きから食品へ転換をするにあたっても車を買い換えなければいけませんでした。だいたい車は5年間でリースするので、一度購入すると5年間は使い続ける必要があります。そこで5年単位で仕事を見直していくように考えていました。少しずつ車を売却して入れ替えていく感じですね。完全に切り替わったのはここ1~2年です。

2014年に三代目に就任したのは正に移行の時期でした。大きな収支差が出ないように繋ぐ最大限の努力はしましたが、さすがに花からの切り替え時には2年間ほど赤字だったこともありました。花き物流に6~70%と大きく依存していた事も一因でした。新しい車のリースや人の採用コストなどが重なり、一気にガツンと落ち込んだのです。

もちろん計画はしっかりと練っていたのですが、やはり計画通りにはいきませんでしたね。銀行には練りに練った経営計画を持ち頭を下げにいきましたし、自社倉庫を売却するなどして何とかキャッシュを作って乗り切りました。ここで痛みを伴いながらもメインの業界を転換してきたことで、従業員の業務負担を抑えながら老若男女問わず働きやすい環境を整えることができたと思っています。



経営者としてこだわりや大切にされていることはありますか。

首都圏の物流業界でトップランナーとなり、その影響を与える集団として存在するため、八大のビジョンとそれを実現する手段としてミッションとバリューを策定しました。

まず、Tokyo logistics influencer(トウキョウ ロジステクィス インフルエンサー)で、「安定的な物流を行うことで社会貢献し、世の中に影響を与える会社になる」というビジョンを掲げています。

ビジョンを実現するための手段としてOne more value(ワン モア バリュー)「他社よりプラスワンの価値をつける」としています。

その行動師範となるバリューは全部で6つ。
Family(ファミリー)「ポジティブなチームとして、家族に誇れる仕事をする」
Open mind(オープンマインド)「コミュニケーションで、誠実な人間関係を築く」
Fun(ファン)「変化を受け入れて、楽しさを想像する」
Study(スタディ)「成長と学びを追及する」
Finance(ファイナンス)「価値を意識して、より少ないものからより多くの成果を生む」
Heart(ハート)「情熱と強い意志を持ちながら、常に謙虚で冷静であること」

従業員一人ひとりが選んで何を大事にしているのかというのを形に繋げました。これだけ人がいると価値観はバラバラになってしまいますので、ある程度は自由度があった方がいいと思っています。

事業のスピード感と社員育成も大切だと実感しました。これまでの反省点を踏まえて、車の売却や事業の撤退に関してもスピード感というのは大事です。あとは、自分がこうやるんだということではなく、みんながこうしたいという空気を演出することかと思います。

社長と現場のリーダーが話していることであっても、どう響くかは人それぞれですし、実際に社長は現場にいつもいる訳ではありませんから。そこでみんなが共鳴しやすいように社長と現場のリーダーの軸を合わせていくことは心がけています。

トップダウンで一人が引っ張るよりも、自発的に考えられる風土を作っていく方が組織として機能していきますよね。こちらとしてはやっとスタートラインに立てた感じです。



今後の展望を教えてください。

今後の事業展開でいくと、今のお客様を掘り下げてシェアナンバーワンというのを大切に考えています。どのような形でもいいのですが、例えばこの営業所において、小さい事のナンバーワンを積み重ねていくことを心がけています。多角化や新規というよりも、今取り組ませていただいているお客様のご要望を徹底的に具現化する事。それを愚直に続けていくことが成長への近道だと考えています。

運送業が面白いのは、運ぶのは何でもいいというところです。紙専業・鉄専業といったように特定の業界に依存するのではなく、こちらが仕事を選べるように今後も柔軟でいようかと考えています。

最終的には従業員が家族をしっかり養いながら長く働いてもらいたい、そして私自身も従業員の給料をしっかりと増やせる様に仕事をしていきたいですね。そのためにも、こちらが仕事を選択できるような強い立場になっていきたいという思いは常に持っています。




<インタビュー情報>

八大株式会社
代表取締役  岩田 享也
会社ホームページ http://hachidai.co.jp/

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