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既成概念にとらわれず挑戦と成長を繰り返し日本文化の繁栄の貢献する

株式会社二葉企画
代表取締役社長 小林 伸行


創業から現在に至るまでの変遷について教えてください。

創業は昭和34年(1959年)、祖父が経営していた印刷会社から独立する形で、製版業として二葉写真製版を設立しました。製版の仕事は当時かなり需要があったようで、その中でもウチは創業当初からマンガの製版を主に取り扱ってきています。

当時はまだマンガの地位が現在よりも低く、カラーとモノクロでは単価が大きく違ったため、あまり利益率の高いビジネスではありませんでした。周りからは儲からないからマンガの仕事は止めた方がいいと言われていたようです。創業期は決して楽な経営ではありませんでしたが、それでも二葉ではこだわりを持ってずっとマンガの製版を続けてきました。

その後、徐々に日本が誇る文化としてマンガがフィーチャーされはじめ、それに伴って二葉写真製版も安定期を迎えます。バブル崩壊に伴い、製版業界では継続が困難になる会社が数多くある中で、ウチはマンガを主体とした事業を展開してきたことで安定した経営を保つことができたんです。

平成元年(1989年)に、二葉写真製版とは別に現在は私が代表を務めている二葉企画を設立。設立当初、二葉企画では写植・版下部門を担っていました。その後、1999年に二葉企画を営業部門、二葉写真製版を製造部門として業務分離し、現在の組織構成となっています。

会社の転換期としては90年代半ば頃からマンガ製版のデジタル化に着手し、DTP業務を開始したこと。デジタル化をどこよりも早くに導入したんです。私の父が必ずデジタルの時代が来るからと周りの反対を押し切って導入したと聞いています。

当時は、まだ売上げも利益も少なかった時だったため、大きな設備投資には反対の声が大きかったようです。父は「自分の給料はいらないから全部投資に使え」と言ってデジタル化を推進したと言っていました。

パソコンを導入した初期の頃は、今と比較にならないほど処理速度が遅く、逆に仕事にならないような状態でのスタートだったようです。しかし、そこでDTPを導入しなかった会社は全部なくなってしまっているので、今やらなければいけないという使命感を持って父が改革を断行したからこそ現在の二葉があると思っています。



会社を継ぐ意識は小さい頃からお持ちでしたか?

小学校から高校までずっとサッカーをやっていて、サッカー中心の学生生活でした。将来的にどうしたいのかは具体的にあまり考えておらず、正直に言って会社を継ごうとは全く思っていませんでしたね。学生時代、父から会社を継げと言われたこともなかったですし、会社が忙しかったのかそもそもあまり干渉されることはありませんでした。

二葉企画に入社することになったきっかけは、大学四年生の時、父から「他に就職が決まっていないんだったらウチに入れ」と言われたことです。実際にどんな仕事をしているのかもよく分かっていなかったですし、それまで一切そういう話をされたことがなかったので驚きましたが、一緒にやろうと切り出してくれた父の真剣な表情を見て二葉企画で働くことを決めました。

二葉企画に入社を決めたときに後を継ぐ覚悟が芽生えたように思います。入ったからにはやるしかないという気持ちでした。体育会系サッカー部の厳しい環境で過ごしてきたので、やると決めたことはやるという感覚は自然と持っていたんです。

サッカー部では身体が動かなくなるまで筋トレさせられたり、イヤというほど走らされたりと理不尽なことも相当経験してきました。体育会系特有の厳しさに晒されてきたので、精神的・身体的な負荷への耐性は鍛えられたと思います。おかげで仕事をしていて辛いと思うことはあまりありません。



入社後、社長に就任されるまでどのような経緯を辿って来られましたか?

二葉企画に入社してからは大手出版社の担当営業をしてきました。会社に入ったときからいずれは後を継ぐという覚悟があったので、他の人よりも何倍も働いて、まずは仕事で認めさせなければいけないなと思っていましたね。

他の人が真似できないようなことをしなければならない、自分にしかないものは何なのかと真剣に考えた結果、自分なりに導き出した答えが体力と行動量でした。

仕事の経験も浅く、知識ではベテラン社員に勝つことはできません。だからこそ、行動の量でお客様との距離を縮め、自分独自のルートを開拓していかなければならないと思うようになりました。

父の弟で私の叔父にあたる二葉企画の前社長は生粋の営業マンで、大手出版社などにも強いパイプを持っている顔の広い人でした。お客様と友だちのような関係性を築くのが上手な方で、仕事をくださいと言わなくても周りからドンドン仕事を紹介してもらえるような人だったんです。いち営業マンとして本当に尊敬しています。

ただ、叔父が付き合っていた方々は役員クラスの方が多く、当時まだ二十代だった私が叔父と同じ様な人脈を作るのは難しいと感じていたので、叔父が拾い切れていない人脈は全て自分が開拓してやろうという気概を持って仕事をしていました。前社長が残してくれた人脈だけでなく自分なりに繋がりを広げてこれたのは大きかったように思います。

入社して8年目から営業部長を務め、3年ほど部長職として働いていた時、前社長から急に代表交代の話を切り出されました。「60歳で引退するから、あとはお前がやれ」と。そう切り出された翌年に代表を交代することになるのですが、突然のことだったので本当に驚きましたね。

営業マンとしての私を認めてくれていたからこその判断だったとは思うのですが、正直に言って当時は社長が何をすればいいのか全然分かっていなかったので、戸惑いながらのスタートでした。




社長に就任されてから取り組まれたことを教えてください。

社長に就任してまず初めに努めたのは財務面の把握。営業一筋で十年やってきて、経理の仕事には一切関わってこなかったので、お恥ずかしい話ですが会社にいくら資金があるのかも分からなかったんです。経営者として会社の状態を把握するため、お金の部分を正確に知ることから始めました。

次に着手したのが経営理念の策定。それまで理念が明文化されていなかったのですが、経営について勉強したり様々な人から話を聞く中で、組織として仕事をしていく上で明確な経営理念を定めなければならないと思うようになったんです。

二葉企画にマッチしていて社員全員が分かりやすく、私自身のやりたいことも表現できる理念にしようと約三ヶ月悩みに悩んだ結果、現在の事業を中心に考え、三つの言葉で表現した経営理念を定めました。

一つ目は「私たちは世界に誇れる“日本文化”の繁栄に貢献します」。創業以来ずっとマンガを取り扱ってきた二葉企画として、日本の文化の発展に寄与していきたいという想いを込めています。

二つ目は「私たちは、一人ひとりが“もっと○○する”ために挑み続けます」。父がいち早くDTPを導入したように、二葉企画は変化を恐れない挑戦と成長に支えられています。敢えて「○○」と空けてあるのは、社員一人ひとりが自分なりの目標を定めて高みに向かって挑戦していく意識を持ってもらいたいからです。

三つ目は「私たちは、いつでも“さすがだね”といわれる考・動をします」。二葉企画の社員には、取引先やお客様など関わる全ての人に「さすがだね」と思ってもらえるような人であってほしいと思っています。専門性、技術力、誠実さ全ての面において同業他社とは違いを感じさせる仕事をしていかなければなりません。

そして、仕事の面だけでなく、私生活の面でもこの理念を反映している人の集まりでありたいと願っています。誰かに見られているからやるのではなく、誰も見ていないところでも同じ行動をとれるようにならなければ、理念が浸透しているとは言えないからです。

長年経営理念が明文化されていない環境の中で若手からベテランまで幅広い社員が働いているため、全社員にまんべんなく理念を浸透させるのは簡単なことではありませんが、一人ひとりに伝えていく取り組みを進めているところです。




三代目社長として変えるべきことと変えてはいけないと思うことは何だと思いますか?

一番変えなければならないと思っているのは受注型のビジネスモデル。今はまだほぼお客様から仕事を依頼されてはじめて売上げが立つようなビジネスなので、自分たちからお客様に商品やサービスを提案できるようにしていかなければなりません。お客様から依頼された仕事をこなすだけでは、我々も面白みがありませんし、本当の意味でお客様のためにもならないと思っています。

提案型のビジネスをもう一つの事業の柱として打ち出すため、現在出版業界以外の業界に今まで培ってきた技術や経験、知識をぶつけてみようと営業を数名動かして新規開拓に取り組んでいるところです。売上げ規模こそまだ小さなものですが、キャラクター制作の仕事など少しずつ成果も出始めてきています。

ウチの強みは、お客様に対して真面目で誠実に対応し、仕事に対して一切手を抜かないところ。お客様からも人に対しては絶大的な信頼をいただいています。この強みの部分は、事業領域を広げていったとしても変わらずに継続していかなければなりません。

一方で、真面目で一生懸命であることの反作用として、変化することに慣れていない組織であることも否めません。安定を好んで変化を嫌う風土は変えていかなければならないと思っています。

小さな組織からスタートしていますが、現在は二葉企画、二葉写真製版を合わせて150人以上の社員がいるため、理念をベースにした強固な組織を作り上げていくことが必要です。採用や教育、評価なども含めて、全社員が高いパフォーマンスを発揮できる環境を作っていかなければならないですね。

初代や二代目は組織づくりにあまり注力してこなかったので、挑戦し成長し続ける組織を作っていくことが三代目としての私の役割だと思っています。



今後の展望を教えてください。

受注を待っているだけではなく我々から提案していく新しいビジネスに今後も更に力を入れていきたいと考えています。いつまでも下請けのような仕事をしていたのでは、今後絶対に継続していくことが難しくなってしまいますから。

そのために、出版業界だけでなく違う業界で様々な仕事を経験していくことで人の繋がりやノウハウを積み上げていかなければなりません。別業界での新規事業を現在の主力事業である製版の仕事と同じくらいの売上げ規模まで伸ばすことが当面の目標です。

そして、別業界で学んだ経験や技術を、これまでお世話になってきている出版業界に還元していきたいと思っています。我々の力で出版業界を盛り上げていきたいんです。これまでは一つの雑誌が休刊になるという話を聞いても、何もできずに黙ってみていることしかできないような非常に情けない状態でした。出版不況と言われている中で、出版物がなくならないために我々ができることが必ずあると信じています。

目指すべき形としては、お客様といっても単に仕事を依頼してもらうお客様としてではなく、お客様と共に付加価値を創り上げていく関係性を構築していきたいですね。その方がお互い仕事をしていて一番楽しいと思うんです。

何も包み隠さず、ざっくばらんに言いたいことを言い合えるような真のパートパーシップの中で、お互いに高め合えるような仕事をしていきたいと思っています。






<インタビュー情報>
株式会社二葉企画
代表取締役社長 小林 伸行
会社ホームページ https://futaba-dd.jp/


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