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彩りで社会の豊かさを作り出す

株式会社フジサワ・コーポレーション
代表取締役 澤田 剛治



創業から現在に至るまでの変遷について教えてください。

創業は昭和22年(1947年)。私の祖父が戦後復興の真っ只中で屋根瓦の製造メーカーとして創業しました。空襲で焼け野原となり住むところもままならないような状況下で、祖父は何か復興に役立てることはないかと考え、雨露をしのぐための屋根瓦を製造する事業を始めたんです。

時代の後押しもあり会社が急速に成長していく中で、瓦製造とは別にマンション建設のゼネコンや写真現像の事業を始めるようになりました。祖父がアメリカに建築市場の視察に行った際、ニューヨークのグランド・セントラル駅にコダック社のカラーフィルムを使った大きな広告が出ていたのを見て大きな感銘を受けたようです。アメリカのように文化的に豊かになる必要があると強く感じ、次の日本の文化を醸成するために写真現像の事業を始めたと聞いています。

1964年にコダック社からフィルムを現像するためのライセンスを頂いて、コダック社の指定現像所としてローヤルカラーという会社を設立しました。これが現在のフジサワ・コーポレーションの前身となる会社です。

写真現像会社の仕事は撮影した写真を画像として見るための中間プロセスです。当時は写真を見るために現像して印刷するというプロセスが絶対に必要でした。さらに共有するためには焼き増しという複製するプロセスが必要だったんです。

技術革新が進み現像などの中間プロセスが必要なくなってきた中で、グラフィックスを活用した企業の屋内外広告・看板などサイン・ディスプレイの企画・制作・施工を事業の中心としてきました。さらに、企業広告の制作の前工程に着目してデザインなどの分野に事業領域を拡大して現在に至っています。

2011年にはグループ企業三社を統合合併し、現在では企業の広告宣伝を制作するコマーシャル・イメージング事業と、賃貸住宅の提供を行うライフデザイン事業の二つを事業の柱としています。


その二つの事業を一言で表すとどのような表現になりますか?

一言で言うならば、人やモノの多様性を創り出す後押しをすることがフジサワ・コーポレーションの仕事だと思っています。

祖父が創業した当時は、豊かさの基準は衣食住であり、その次に文化的な豊かさが求められてきた時代でした。そういった時代背景の中で日本を豊かな国にするために、屋根瓦や建築、写真といった事業を手がけてきたんです。

創業者の想いを引き継ぎ、現在でも我々は日本の社会を豊かにすること、また日本だけではなく世界を豊かにしたいという気持ちを非常に強く持っています。現代社会では一人ひとりの生活スタイルが異なるため、画一的な豊かさではなく独自性やユニークさといった多様性のある豊かさが求められていると思うんです。

広告宣伝事業を通して他社と差別化した多様性のある企業のブランディングを支援し、不動産賃貸業では人々が大切にしたいと思っているライフスタイルの実現に向けた支援を行っています。
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フジサワ・コーポレーションの経営理念を教えてください。

実はこれまで経営理念が明文化されていなかったため、昨年「彩りで社会の豊かさを作り出す」という経営理念を策定しました。

私は三代目の経営者として世襲で会社を引き継いでいるので、自分で何か解決したい課題があって会社を設立したわけではありません。そのため、社長に就任してから6年間は会社を成長させていくための切り口が見つからず悩んでいました。

そこで、会社の歴史をさかのぼったり、お客様に評価いただいている点や、どのような社会課題の解決に貢献できているかを改めて考え、経営理念を明文化しようと思い立ったんです。悩みに悩んでいくつか考えてみたものの、しっくりこなかったのですが、昨年THE MAPさんの座談会に参加したときに閃くものがあって、一晩で経営理念を策定しました。

「彩」という漢字を分解すると、左側の「采」は木に人の手が伸びている様子を表しており、右側の「彡」は女性の髪が艶やかになびく様子を表現しています。

二つを組み合わせて、木に実る色とりどりの果実の中から人は意識的に選び取ることで豊かさや綺麗さが生まれることを意味しているんです。我々は「彩」という漢字に多様な個性の集合体という意味付けをしています。



三代目として考えるフジサワ・コーポレーションの強みは何ですか?

我々の最大の強みは、お客様の思いや考えを実現するための課題解決能力です。フジサワ・コーポレーションは70年という長い歴史の中で、屋根瓦の製造から始まり、建築のゼネコンや写真現像、グラフィックスを活用したサイン・ディスプレイと様々な事業形態に変化してきています。

全く異なる業種にシフトしてきたわけではなく、核として豊かな社会を実現するという想いを持って事業内容を変化させてきているので、70年間で積み重ねてきた幅広い経験やノウハウにより、お客様の抱えている課題を解決する能力には圧倒的な自信を持っているんです。

先日行ったCS調査では、お客様に評価していただいている我々の強みは「従業員の対応の良さ」でした。お客様のことを徹底的に考えて誠実な対応を心がけている社員が多いのがウチの会社のカラーなんです。

事業面での強みとしては、主要拠点を山手線沿線に集中させていることで、お客様の要望にスピード感を持ってお応えできる点が挙げられます。広告業界はスピード感が求められる業界です。お客様のご要望に翌日にお応えしなければならないことも少なくありません。

そのため事業所の立地は相当重要視しています。2016年に本社ビルを建て替えて工場を移転させた際も、郊外の土地も候補には上がったのですが、結果的にはお客様の求めるスピード感にお応えするために駒込という場所を選択しました。



幼少期や学生時代はどのように過ごされましたか?

小さい頃からずっとボーイスカウトの活動をしていたのですが、父は私に人の上に立つ人間になってほしいという思いがあったようで、とにかくリーダーシップに関しては厳しく教育されていた記憶があります。

今でも覚えているのは「自分でやるんじゃない!誰かにやらせるんだ!」という父の言葉です。それだけしか言われないため、子どもの頃は父が何を意図しているのか全然理解できずに悩んでいました(笑)。今思えば、自分一人でやるのではなく自分以外の誰かができる仕組みを作って大きな成果を生み出せということを言いたかったんだと思います。

また、小中高大と一貫教育を受けてきており、小学校から大学院まで18年間同じ学校だったので、その間にできた友人たちと何かプロジェクトをすることが好きでしたね。何十年も活動を休止していた部活動の再建や、中学の時に音楽が好きな仲間で集まってCDを制作したこともありました。モノづくりやコトづくりが学生のころから好きだったんです。

大学三年生の時には、友人と一緒にウェブインパクトというベンチャー企業を立ち上げたこともあります。ウェブブラウザを通して業務用のアプリケーションを提供する、今風に言うとクラウドサービスの会社です。2001年に大学を卒業して外資系の会社に就職したため私は途中で離脱したのですが、その会社は今でも続いています。



会社を継ぐ意識をお持ちになられたのはいつ頃からですか?

創業者である祖父と二代目である父の影響もあり、また母方の祖父も上場企業の社長をしていたため、子どもの頃から私も社長になりたいという意識は高かったですね。

しかし、2001年に大学を卒業してから、父が決めようとしていた関連会社への縁故入社を断って自分で外資系の会社に就職を決めました。そこで4年半ほど勤めた後、当時の先輩が別の外資系企業に移って私をヘッドハントしてくださったため転職してもう一社経験しています。

二つの外資系企業で計6年間働き、三社目に移ることを考えていた時、父からフジサワ・コーポレーションに入社しないかと声をかけられたんです。当時、自分がやりたい仕事もできていましたし待遇面にも不満はなかったため非常に悩みましたが、結果的に2007年にフジサワ・コーポレーションに入社することを決めました。

その時に一番考えたのは、祖父が創業し父が守り続けてきた会社を途絶えさせてはダメだということです。子どもの頃から生活の中心には会社があり、その中で私はずっと育ってきているため、家族のためにも会社を途絶えさせてはいけないと思いが勝り、三社目のお誘いを断ってフジサワ・コーポレーションに戻ることを決意したんです。




入社してから社長になられるまでの経緯を教えてください。

2007年に入社してから数年間は平の営業マンとして、駅広告の代理店の担当営業をしてきました。それから営業課長、部長を経て、2010年に役員に就任することになります。

2011年にグループ企業三社を合併するためのプロセスは私が全て担当しました。その時に初めて経営というものを意識するようになったと思います。それまでは前職の外資系企業も含めてずっと営業職をしていたため、考えていたのは売上げのことだけでした。会社全体のことなんて意識したこともなかったんです。

私自身、一度経験してみないと理解が深まらないタイプなので、合併のプロセスを進める中で実際の事業計画を立てたり、経営について実践しながら財務面の経験を積むことができたのは非常に有難かったですね。

父から経営を引き継いだのは、その翌年の2012年の12月です。前々から決まっていたわけではなく、父からいきなり「そろそろ社長になれ」と言われて三代目を拝命することになりました。

ただ、しばらくの間は単独代表ではなく父との共同代表で、父と私に両方執行権があるパターンだったため、社長になってから数年間は実質的には社長らしい仕事はしていませんでしたね。

人事権については早い段階から私に委譲してくれていましたが、予算に関しては社長の私が決めた発案に対しても父がひっくり返すということが頻繁にあり、会社として設備投資などにお金を使う判断はしばらくの間させてもらえなかったんです。

4~5年程そういった状況を経験し、ようやくここ1年くらいは細かいことを言われずに任せてもらえるようになりました。父が歩み寄ってくれたというよりも、私自身の経営者としての感覚が少しずつ父に近づいてきているように思います。




会社を継がれてからどのような課題に直面されましたか?

人材育成に関しては社長に就任した直後から課題を感じています。先代の父が比較的ワンマン経営だったため、社員たちが自分で判断しなくなってしまっていたんです。

対策として人事制度を変えたり、モチベーションを向上させるための仕組みを導入するなど様々な試みを実施しています。最近ようやく上手く回り始めてきましたが、まだ満足いく結果は出せていないのが現状です。

会社を機能させていくためには、経営者としての判断と現場からの意見をすり合わせていくことが必要だと思っているのですが、私が決めたことに対して未だに現場から意見が上がってこないことが多いんです。

とにかく意見を言わせる仕組みをつくろうと思って、会議の時にポストイットワークを採り入れました。勉強会を開催した時にその場で質問を求めてもなかなか出てこないので、取り入れてみたいことや感想をポストイットに書いて提出させるんです。

集団の中で手を挙げて発言することを苦手にしている人が多いため、書くことで意見を提出させるようにしたことで、8~9割方はちゃんとした意見が上がってくるようになりました。社員一人ひとりが意見を出すことを習慣づけていきたいと思っています。

2016年に本社ビルを建て替えたときも、営業と製作を同じワンフロアーに置いたり、壁を全面ホワイトボードにしたコラボレーションスペースを作ったりと、組織の風通しをよくするための工夫を幾つも凝らしました。人が会社の全てだと思っているので、その人をどうやって成長させていくかが最大のテーマだと思っています。


三代目として変えるべきところと変えてはいけないと思うところはありますか?

人事制度など社内の仕組みもそうですが、仕事面でもプロセスは変えていかなければならないと思っています。

以前はルートセールスが主体の営業スタイルだったのですが、既存のお客様との関係性は強くなるものの新しい提案をする機会が少なくなってしまっていたため、ルート営業の仕組みをやめて仕事がありそうなお客様に提案しに行くようにしています。

また、これまで実績レベルの数字を経営判断に反映させる仕組みがなく、感覚で判断していた部分が大きかったため、数字を吸い上げて分析するためのシステムを導入しました。営業の仕組みをはじめ、経営判断のシステム導入など仕組みの改革は積極的に進めています。

それに対して変えてはいけないものは、昨年明文化した社会の豊かさを実現するという企業理念の部分と、お客様から評価していただいているお客様への誠実な対応の部分です。

それと、これまで事業を変えながら会社を継続させてきているので、時代に合わせて柔軟に対応し変化しつづける姿勢は変えてはいけないと思っています。70年という歴史がある中で、変化への意識が少しずつ薄れてきてしまっているところがあるため、今まさにそこを再活性化していかなければならないという思いは強くありますね。

今後の展望を教えてください。

広告宣伝業界に求められているのは、まさに多様性だと思っています。業界的に広告宣伝物を大量生産するマスマーケティングの考え方から抜け出せなくなっていますが、人口が減少し続ける社会の中ではマスマーケティングはあまり効果的ではないはずです。多様性を理解して個々の人に届くメッセージを打ち出していくことが必要になってきます。

日本は中小企業がたくさんある中で、中小企業の価値やブランドを高める少量生産の広告宣伝物はこれからチャンスが大きい分野だと思っています。屋内外の看板や装飾だけでなくグラフィックスを活用した新しい広告宣伝手法には挑戦していきたいですね。

多様性を支援して社会の豊かさを生み出していく会社として、社内にも色んなキャラクターがいて様々なアイデアがあり、それに挑戦し続ける会社でありたいと思っています。新しいことに10個挑戦して9個失敗するというのを繰り返せる会社になっていくことがフジサワ・コーポレーションの目標です。




<インタビュー情報>
株式会社フジサワ・コーポレーション
代表取締役 澤田 剛治
会社ホームページ http://www.fujisawa-corp.co.jp/

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